ダンスでは相手の触れ方は非常に大切です。リードは男性がしますが、女性の手や背中への触れ方が上手であるなら、女性は身を任せて身体が自動的に優雅に動きます。次のステップなどは気にしないまま曲に酔いしれてダンスの世界に気持ちよく溶け込んでいきます。
上手なリードでは、手のひらに軽く触れている手、背中に軽く触れている手、あるいは軽く接触するお腹が進むべき方向や動きを繊細に示してくれるのです。特にタンゴやワルツなどでは、相手の一体感、曲との一体感が生じたとき恍惚を味わうことができます。
武術も同じだと言えます。攻撃が受け手によって上手に触れられて反応されると、力が抜けて膝が抜けるように崩れます。倒される危機感もなく、良い気持ちのまま崩れます。膝から崩れることが、技が正しくかかった証です。
逆にうまくいかないときはどのような感じでしょうか?
攻撃手は、受け手の触れた手から反発の衝突・力を感じます。攻撃手は衝突を感じますので身体の芯は自然と抵抗して崩れません。崩れないと、受け手は本能的にますます力を入れて倒そうとするので、攻撃手は接触点で痛みを感じ、倒される恐怖感が生じます。無理に力で崩すそうとすると攻撃手は不自然に倒れてケガをしたりすることがあります。下手な受け手は自分では力を抜いて触れて反応しているつもりなので厄介です。
もちろんダンスは相手を最初から倒すつもりはないのではるかに優しいのですが、それでも無理やり動かされているいやな感じが残ることがあります。武術では、最初から相手を崩す目的があるので、ダンスよりも優しく触れることははるかに難しいと言えます。
ここまで来ると、動きのテクニックではなく、どのような意識を持つことが重要であることが、おぼろげにわかってくると思います。
相手との調和の意識が重要です。それに集中できれば技はかかります。
調和に意識が集中するためにはスムーズな体の動きももちろん重要です。力まずに自然に動けるとき、調和の意識に集中できます。
身体の動きに神経が行くときは、相手を倒そうと思うときと同じに、調和の意識から遠ざかります。
ここに、型を稽古する意味があります。理にかなった体の動きが無意識にできることが衝突なく相手を崩す必須の条件となります。
余談です。ダンサーとけんかするなという言葉があります。優しく触れられ、崩されるからです。
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