下丹田の呼吸が入り込みに最強である可能性があると言いました。
しかし、下丹田の意識も心もとないのに、そこで呼吸をすることは非常に難しいことです。
下丹田の位置はへそ下3寸といわれますが、もちろん解剖しても存在しません。
下丹田の呼吸を訓練する前に、下丹田を明確に意識できることが必要です。自分ではっきり意識ができないなら、師から気を下丹田に入れてもらうことが必要かもしれません。
身体の正中線、重心の位置などと同様に意識ができるようになると明確な実在となります。また、自分の下丹田や正中線が意識できるようになると、相手がそれらを意識できているかどうかも明確にわかるようになります。
まずは下丹田の存在を認識しましょう。そのための近道は「型」ですが、型をするのは下丹田を鍛えるためであるとに認識することが重要だと思います。
これを続けることによって、下丹田は常に意識の中心となります。
サンチンやナイファンチンで正しい運足することで重要です。運足の動きそのものに意識を向けるのではなく、運足で下丹田を鍛えていると意識を変えます。
基本稽古でも下丹田を鍛えるために行う、などと、型の動きのすべてが下丹田を鍛える意識にするのです。
歩く時間はかなり長くありますので、歩く動きが下丹田を鍛えると認識すると結果的に長い時間稽古することになります。
下丹田が意識できるようになったら、次は下丹田での呼吸を意識して稽古します。
下丹田の呼吸ができる身体に近づける方法も「型」です。
一般的に型では呼吸を表に出しませんが、サンチンでは呼吸をはっきり表に出します。
サンチンをやりこむことで、動きと呼吸、さらに気の流れが連動することになります。
下丹田での呼吸を簡単に説明します。
口を軽く閉じて鼻から下丹田で息を吸います。
そのまま下丹田を意識したまま、口を軽く開けて下丹田から息を吐きます。
注意すべきことは、吐くときに下丹田から意識が離れやすいことです。つまり下丹田から息を吐けないのです。
館長の演武を見ていると、相手と向かい合った時に口をかすかに閉じる動きを見ることができます。長年の謎でした。実はこれは下丹田で息を吸っている動作でした。
下丹田での呼吸ができると、どのようなことができるようになるのでしょうか?
下丹田の呼吸の威力は座り技で知ることができます。
座って両手を膝の上に置きます。向かい合って座った相手に両手首を握ってもらいます。相手をひっくり返すなど崩します。
いくつかの方法がありますが、下丹田で呼吸ができると、相手の身体は無重力状態のように軽く浮き上がって崩れます。他のいかなる方法より簡単に崩すことができます。しかも瞬時に技がかかります。
これは立った状態で両手首を掴まれても、同じように崩せます。
さらにはいかなる攻撃に対しても瞬時に対応ができます。躊躇がありませんし、動きを計算することなく最適な動きで崩すことができます。
実は今まで、「優しさ、受け入れ、愛」と相手と調和する方法を述べてきましたが、それらの方法をすべて凌駕する可能性があるのが下丹田による呼吸であることを館長から示されました。
これ以上の記述はやめることにいたします。言葉による伝達は限界がありますので。