型は外形を整え、その後内面を鍛えていきます。
外形を整えるまでは急速に伸びる道場生がいます。指導されることを一生懸命理解し練習する生徒です。
真面目な優等生は言葉の説明を正確に理解しようとします。理解に従い正確に体を動かします。型の外形や体の操法の習得には先生の言葉を正確に理解し、動くことが重要です。
指導された通り、間違いのない外形で型を披露できます。
でも相手をなかなか崩すことができない場合があります。真面目に稽古しているのになぜ相手を崩せないのか? 壁にぶつかります。本人も苦しみます。
大きな原因は相手を崩さなければという目的意識の強さです。優等生は目的を達成する意識が高くそれに向かって真剣になります。通常は優れた資質です。しかし、この姿勢が身体に緊張を生みどこかに力みを生みます。
別な原因は、それまで外形を整える原動力となっていた言葉に対する真剣度が強いことです。言葉を正確に理解し、言葉に従ってから身体を動かそうとします。
しかし、内面を鍛えるレベルになると身体で感じて動く世界となります。空間を意識し、エネルギーや気の流れを感じたり、空間の質を感じたりします。例えば、空間の優しさを感じたりします。空間に手足を溶け込ますように動きます。さらに優しさや思いやりなどの雰囲気を空間に作り出すことが必要となります。
これらの感覚は言葉で説明することや言葉で理解することは難しくなります。イメージや感覚で掴んでいくしかありません。
言語の世界から感覚の世界へ変えていく必要があります。左脳の世界から右脳を活性化する世界への変換が必要となります。
これが「入り込み」につながることになり、結果として相手を崩せるようになります。
今までの得意なやり方を捨てる段階にきているとも言えます。そのことで新しい世界が開けると思います。
最後に強調したいことは、正しい型の稽古を続けていくことで内面が鍛えられます。型の稽古を抜きにしてイメージだけを追い求めることで内面は鍛えられません。その意味ですべてはサンチンの稽古が基本であると断言できます。