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自然体・・・赤ちゃんを抱く

脱力しリラックスをしていていながら気の通った身体であることが、武術に不可欠の身体になります。

「統一体」とか「自然体」あるいは「締まった身体」と言います。

このことを繰り返し述べてきました。頭でそういうものかと理解できたとして、身体をこの状態にすること、保つことは非常に難しいのです。

そもそも全身から筋力を抜くこと自体が大変難しいです。どうしてもどこかに力が入っています。攻撃する相手と向き合うときはさらに緊張して体中に力が入ります。

簡単にこの状態になる方法として、道場生に試してもらっている方法があります。

すでに紹介している方法ですが、誰でも簡単に体験できる方法なので繰り返します。

両足を肩幅に立って両腕を立てたいわゆる両構えをしてもらえます。

最初は何も考えずに単純に構えます。

この両構えの姿勢を相手に肩を横から軽く押してもらいます。上体は簡単に押された方向に崩れます。

次に同じ構えをしますが、赤ちゃんを両腕で抱いたつもりで立ちます。

子供をお持ちの方は、子供が赤ちゃんだった頃を心に再現します。若い方も、赤ちゃんを抱いた経験はあると思います。

赤ちゃんの温もり、柔らかさ、重さ、匂いを身体で感じるのです。

赤ちゃんを抱くとき、柔らかく抱きます。大事な宝を決して落とすことのないように守る心で抱きます。

この時の身体はどこにも筋力の緊張はありません。物を持つ時のように膝を曲げて腰に力を入れて体のどこかを固めて重さを支えるようには立たないと思います。すっと立っていると思います。

この状態で先ほどと同じように相手に横から肩を押されても少しも崩れないのです。

赤ちゃんを抱いたつもりの構えと単純に構えたときの反応の違いは押している相手は明確にわかります。赤ちゃんを抱いている状態の身体は芯が通ったように押してもびくともしません。

肩を押される本人も違いは明確です。外からの刺激に対して赤ちゃんを抱いていると心も平静で押されることに全く平気なのです。

押される方向が対して筋力で頑張るとどうなるでしょうか?

肩を横に押す方向に対して筋力で頑張ろうとすると、それと異なる方向、例えば前後に押すと、簡単に崩れます。赤ちゃんを抱いた状態ではどの方向からでも崩れなくなっています。

複数の人に攻撃されるときも、赤ちゃんを抱いている身体で対応すると、相手と衝突しないで攻撃を裁くことができます。

このテストは初心者にとって心の在り方が身体の状態を大きく変えることがわかるので、稽古の目指す方向を理解するのに良い方法です。

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詳しくは大坪英臣道場長著『心を使う 右脳の空手』(風雲舎)』

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